HPF2022

HPF2022(大阪府高校演劇祭)の観劇レポートのブログです。

阿倍野高等学校『無題』を観劇して

『無題』という題名からは全く想像できなかった内容でした。私の名前も、女の子なのに時々男の子と間違えられるような名前で、撫子とは共感するところがありました。ですが、この作品で、名前と自分の人生の歩み方について考え直すことが出来ました。改めて名前というもののあり方を考えさせられる作品で、とても素敵でした。

 

最初獅狼が拳銃を見つけてきてしまった所では、見ている側もこの先どうなってしまうのかドキドキしてしまいました。

最後はとても感動的な終わり方でした。伝えたいことを主役の3人ではなくて、ヤクザ役に言わせたところが意外でした。ヤクザはこの物語においていい役だったと思いました。

拳銃を拾うという出来事を通して、変わっていく登場人物たちの姿に引き込まれ、最終的に大きく成長する様子には心が動かされました。

 

照明はブルー暗転の際にシルエットが浮き出るように見せられていたのが演出効果として見ても素晴らしかったです。

音響は音楽のみで、音に頼らず、シンプルな演技で勝負に出ていると感じました。音楽と声量もちょうど良かったです。また、舞台上には何も無いのに、風景や物があるかのように見えました。それだけ演技でカバーできていたので、すごいと思いました。

 

役者は日常のよくある細かい演技までできていました。ヤクザの2人はとても雰囲気が出ていました。

獅狼の様な普通の高校生が、拳銃を手に入れた途端大きく変わってしまう所が、以前の獅狼とのギャップもあり凄く印象的でした。

美月役の子が猪狼くんのことを最後に「猪狼」と呼び捨てで呼んでて、この一件で仲が深まったことを表していて良かったです。

撫子は家での演技が印象的で、ドアの開け閉めのパントマイムが上手でした。撫子のお父さんの怒る演技のところも迫力がありました。怒った時の声量が強くて怒りの演技も良くて、父としての息子に対する気持ちがよく伝わってきました。

勇役の演技が上手でした。姿勢や目線まで再現されていて、臆病な感じがすごくよくわかりました。最後に、先生になるという決意をそれまでの演技とは逆に力強く宣言するところが、とても感動しました。

 

改めて阿倍野高等学校さん、素敵な作品ありがとうございました。今後も高校演劇での活躍を楽しみにしております。公演お疲れ様でした。

 

桜塚高等学校 1年 中原 響